ポスターカラーで描くアニメの背景では
「厚塗り」と「薄塗り」があります
デジタルイラストでも「厚塗り」という言葉を耳にしますが
この記事では
ポスターカラーで描くアニメの背景での
「厚塗り」と「薄塗り」の違いと
それぞれのメリット・デメリットをまとめます
実際に絵具で「厚塗り」や「薄塗り」といった技術を使わない人も
この使い分けを知っていると
絵具で描いたアニメ背景や水彩画を観たときの
「へぇ~」が増えると思います
「厚塗り」と「薄塗り」の違い
違うのは絵具を溶く水の量です
「薄塗り」は絵具を多めの水で溶くので
画用紙の凸凹がわかります
「厚塗り」は絵具を少なめの水で溶くので
画用紙の目が絵具で埋まりやすく
画用紙表面の凸凹がわかりにくくなります
下の作例を見てください
上段:「厚塗り(適正水分量)」で塗った色
中段:「薄塗り」をした色
下段:薄塗りと同じ明るさになるように
白を混ぜた「厚塗り」
上の図で中段と下段を見比べると
ザラザラとツルツルといった違いがわかると思います
使う絵具の顔料によるので
薄塗りをすれば
必ずザラザラが表現できるわけではありませんが
薄塗りの方がザラザラを表現しやすいので
自然物や古い壁などを描くときに使います
厚塗りはツルツルに見えるので
金属や新しいものを描くときに使います
シンプルですが
使い分けられるようになると表現の幅が広がります
デジタルでブラシを使い分けたり
テクスチャーを貼ったりする感覚で
使い分けています
上の例は
前述のコバルトブルーやブルーセレストと同じようにグレーを使って
古いザラザラな壁とツルツルした床のつもりで塗りわけています
描きこまなくても
質感の違いを表現できているのが
わかると思います
「厚塗り」のメリット・デメリット
メリット
- 色が合わせやすい
「厚塗り」は水分量が一定なので同じ色が作りやすい
デメリット
- 水分が少なすぎると乾いた絵具がひび割れる
- 上から水分の多い絵具を重ね塗りしにくい
- 下書きの線が完全に消えるので
アタリを取り直す手間が増える - 絵具が割れたり、溶けたり、凸凹していたり
上からペンを入れにくい
「薄塗り」のメリット・デメリット
メリット
- 上から薄塗りで重ね塗りしやすいので複雑な表現がしやすい
- 絵具を塗っても下書きの線が薄く見えるので描きやすい
- 上からペンを入れやすい
デメリット
- 水分量で明度が変わるので色を再現しにくい
- 水分が多すぎると発色が悪くなる
身につけやすさ
「薄塗り」をする場合は
地塗りといって画用紙を濡らした状態で塗るときに
画用紙の水分が多い状態で水分すくなめの絵具で描く場合もあれば
紙の表面が乾いている状態で絵の具の水分を多めにして描く場合もあります
どちらの場合も経験して
タイミングと水分量を覚えていくしかありません
ポスターカラーを使い慣れない新人は
色が合わせるのに苦労するため
色が合わせやすい「厚塗り」で描き慣れてから
「薄塗り」を身につけることが多いのではないかと思います
僕が背景会社に就職した2005年頃は
「上手い人は薄塗りの人ばかり」と聞いたことがあります
上手いなと思う背景で
画用紙につけた下書きのカーボン紙のあとが
質感や輪郭線のように
うっすらと見えるのが
かっこよくて憧れました
グラニュレーション
グラニュレーションとは
顔料の粒子が大きかったり
顔料同士が密集しやすかったりして
画用紙の凸凹にはまり込んだ結果
粒子のように見えることです
薄塗りをする場合は
グラニュレーション色かどうかを意識して
使う色を選んでいます
アニメ背景で使われている
ニッカーのポスターカラーには
グラニュレーションの表記はありませんが
ホルベインの透明水彩には
グラニュレーションを起こしやすい絵の具には
表記されるようになりました
下の絵は
ずいぶん前に描いた透明水彩画ですが
グラニュレーションを利用してスキレットの
ザラザラを表現しています
まとめ
「厚塗り」「薄塗り」を使い分けることができるようになるには
色々と試してみる必要があると思いますが
使いこなせるようになると
水分量やタイミングだけで
多くの質感を表現できるようになります
あっこれ
グラニュレーションで表現してみたい!!
厚塗りで描いてみたい!!
なんてワクワクするような閃きを経験するために
いろいろ試してみてください