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「面」と「層」で考えて空間をシンプルに表現する

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はじめに

漫画やイラスト、ゲーム、アニメなど
風景や背景を必要とするものはありますが

そのなかでもアニメの背景は
キャラクターが画面内を動き回るので
漫画やイラストよりも空間表現を重視しているように思います

この記事では
絵具でアニメ背景を経験したことがある僕が
どのような考え方で空間表現をしているかをまとめます

背景会社の先輩から
このように考えた方がいいと
教えてもらったわけではなく
経験上身についた考え方なので

僕以外の人も同じように考えているかは
わかりませんが
考え方のうちの1つとして知っておくと
特に別ジャンルの絵を描いている人にとっては
何かのヒントになるかもしれません

この写真を絵にするときに表現するべきポイントは?

下の2枚の写真を(アニメの)背景として描く場合
空間を表現するために
どんなポイントに意識して描きますか?

一見、複雑に見えますが
左の写真に関しては「地面」としての平面
右の写真に関しては「建物」と「道路」2つの平面
表現できているかどうかがポイントになります

優先順位としては以下のようになります

  1. 空間(平面)表現

  2. 立体や固有色、質感などの表現

立体感や固有色、質感の違いなどに目が行きがちですが
それらの優先順位は空間(平面)表現の次になります
つい質感表現に気を取られて描き込みがちですが
表現するべき空間を壊してしまっては本末転倒です

「面」として考える

1つの平面

平面として考えるとはどういうことか
ラフですがグレーで説明します

画像

奥が明るくても暗くても構いませんが
今回の作例では奥を暗く描いています

地面の奥が暗くなるように
平面のグラデーションをかけたら
このグラデーションを枯草の部分と考えます
(手前から奥まで面積が大きいので
枯草を基準にしました)

固有色の異なるアスファルトや砂利道、植え込みを
範囲指定を使って「色相・彩度」で
明度を調整して上図を作成しています

広い面積をベタ塗りしたり
平面空間に対応しない陰影をつけてしまうと
せっかく作った平面空間が壊れてしまいます

グラデーション自体を平面空間と考えて
その空間を壊さないように
気を付けながら描き込んでいけば完成
です

実際には、このような描き方をすることは滅多になく
普通は色を選んでペイントして平面空間を作っていきます
平面空間としてのグラデーションを
壊さないように描くということを
わかりやすく説明するために大げさに説明しています

2つの平面

2枚目の写真については
下図のように2つの平面に見えるかどうかが重要です

画像

葉っぱに覆われていようが
赤や緑で固有色が違おうが
建物という大きな平面から
かけ離れてしまうと見づらくなります

「層」として考える

もし下図の上段のような写真を背景として描くとき
どのようなことに注意しますか?

画像

イラストの場合は何も動きませんが

もしキャラクターが動き回る
アニメやゲームの背景の場合

上図の下段のように
柵の手前にキャラが入ってくる場合や
水上にボートが入ってくる場合だけでなく
両方の場合も考えられます

そういった場合は
それぞれの場合で
表現しなければいけないポイントが変わってきます

 

ここでミルフィーユのような「平面」の重なりを
「層」と呼ぶことにします
(「層」は平行、「面」は直交など)

上の図で
遠景ー空と対岸
中景ー水面
近景ー地面と手すり
という平面の重なりの「層」と考えます

  • 手前にキャラが立つ場合
  • 水上をボートが移動する場合

ともに遠景、中景、近景として
層の重なりを表現することに変わりありません

では違いは何か?

水面を平面として表現する必要があるかどうかです

「手前にキャラが立つ場合」
水面が平面であるということを表現する必要はない

  • 遠景より中景が手前に
    中景より近景が手前に見えていればいい

 

「水上をボートが移動する場合」
中景の水面を平面として表現しなければならない

  • 水面が平面に見えなければならない
  • ボートに対して遠景がきちんと遠くに見えなければならない
    ボートに対して近景がきちんと近くに見えなければならない

といった違いがあります

画像

まとめ

どうでしょうか?
仮に仕上がりは同じような絵であったとしても
表現しようとしていることは違います

僕は仕事で後輩の絵をチェックするようになって
やっとこういった視点を持てるようになりました

描き始める前に自分が表現しなければいけないものは
「面」なのか「層」なのか
それとも両方なのか意識するだけで
ポイントが明確になるので
ずいぶん無駄な労力を削減できると思います