PR

立体を3階調で描く

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

電柱やビルなど同じような形のものを描いていても
毎回影つけに時間がかかってしまう
毎回影つけがバラバラで再現性がない
といった悩みがある方はいませんか?
これは僕がアニメ背景を描き始めて最初にぶつかった壁です

具体的に何がキッカケだったかは忘れましたが
僕は立体を3階調で描く訓練をしたことで
同じ光源の同じような立体を描く場合に
毎回陰影のつけ方で悩むことがなくなったので
素早く再現性のある絵を描くことができるようになりました

とにかく頭痛くなるくらい考えて
考えなくても描けるようになれるよう心がけたことは覚えています

 

立体を描く場合

  • 光面
  • 影面
  • 反射光
  • ハイライト

など色々な情報を表現しなければなりませんが
その情報を取捨選択して3階調で立体を表現するコツと
練習方法
をまとめます

3階調で描けるようになると時短と再現性が手に入るので
本来集中するべき絵作りに時間を使えるようになります

どんな立体でも3階調あれば基本的な表現はできる

僕の中学の時の美術の先生は
3階調あればどんな立体も基本的な立体表現ができるから
アニメーションのキャラはすべての無駄を省いた表現だと
言っていました
また、トンコハウスの堤さんも
3階調の立体表現が一番シンプルでインパクトがある
言っていました

アニメの背景会社に就職して
20年近く事あるごとに3階調に関して調べてきましたが
なにを根拠にしているのかは全くわかっていません
しかし、実践的に使われている技術や考え方であることは確かなようです

画像
3階調の具体例

3階調で描くコツ

コツとしては
下図のように①②③といつも同じ順を追って描くことで
パターンを覚えてしまうことです

壺や花瓶など複雑な形の場合は
写真ではなく実物を見ながら描いた方が描きやすい
と思います
一度実物を見ながら同じものを
以下の2つのパターンで描き比べてみてください
場合によって両方描き分けることができたほうが
表現の幅が広がります

ここで重要なことはボカシを使わないことです
慣れないと怖くて、つい境界線をボカシてしまいがちですが
ボカシてしまうと手数が増えて時間がかかる上に
立体がきちんと表現できているかが曖昧になってしまいます
最初は上手く描けずに不安になりますが
ボカシを使わないで練習してみてください

画像
3階調のコツと日用品のスケッチ

おすすめの練習方法
上図のようにモノトーンの日用品を見ながらスケッチしてみることです
ラベルや模様は無視して立体だけに集中してください
マグカップや花瓶、鉢、食器用洗剤の入れ物やぬいぐるみなど
単純な円筒形から少しずつ複雑な形にしていくのがいいと思います

5,6階調と色数を増やすのは簡単です
最初に一番難しい3階調で練習してみてください
立体をシンプルな明暗で見る訓練になります

3階調の模索

慣れてきたら参考を見ずに
球や円柱を3階調で順光、逆光を描き分けてみてください
下に全部ではありませんが、いくつか例を載せています

接地影と立体を描き分ける必要があるかどうか
明暗差はどれくらいが適切か
思いつく限りのパターンを描いてみて
表現したい光の強さや距離感のコントラストのパターンを模索します

画像
順光、逆光の描き分けの応用

球と円柱の順光、逆光の描き分けができるようになると
上図のようにデフォルメされた雲や木を描く場合も
自信をもって再現性のある陰影表現ができる
ようになります

曲がった円柱の考え方

アニメ背景会社の新人研修時に
曲がった円柱なんて難しいものは見ても描けないんだから
曲がるストローとか身の回りの物を見て描け
と言われました

ただ、いつも近くに参考になるような物があるとは限りません
そんな場合には円柱を多角柱として考える
どこが影の部分になるのかがわかりやすくなります

画像
曲がった円柱を多角柱として考える

「説明的な立体表現」と陰影表現

ここで「説明的な立体表現」について説明します
もしかしたら他に正式名称があるのかもれませんが
ここでは僕の造語の「説明的な立体表現」と呼びます

「説明的な立体表現」とは
誰が見てもわかるような記号的(説明的)な立体の明暗表現
のことです
全方位から柔らかい光が当たる曇天に近い状態ですが
現実にはないデザインされた表現です

なぜ説明的な立体表現を考える必要があるのかというと
順光や逆光を描き分ける前に
頭の中で光源に左右されない立体の明暗表現をイメージできたほうが
ラク
だからです
イメージとしては光源を設定する前に
立体を頭の中でモデリングする感じ
です

また、照明のない室内や洞窟の中など
実際には光のない状況や弱い光の絵を描く場合に
できたほうが便利な考え方です

下図を見てください
具体的に説明的な立体表現を説明します

画像

「説明的な立体表現」を描くポイント
真上から弱い光が当たっていると仮定して
同一平面を同一の明るさに統一することです

面の向きによって明るさを決めることで
その立体の面がどちらを向いているのかを説明的に表現します

画像

仮想上の「説明的な立体表現」を描くことで頭が整理されたら
改めて順光や逆光など光源を設定して光を当てます

もちろん描き慣れている人は
いきなり光源設定した状態で複雑な立体を描くことができると思います
しかし、意外と接地面に影が落ちないほど弱い光の場合は
どう描けばいいのかわからないといった状況になってしまうことがあります
なぜか?
立体を表現する明暗表現と光を表現する陰影表現を混同してしまうからです

自分がいま立体を明暗で表現しているのか
陰影によって光を表現しているのかを区別できるようになるためにも
慣れないうちは陰影表現をする前に
明暗表現をすることをおすすめします

演習問題

具体的に身の回りにあるようなものを描いてみてください
意外と頭を使いますよ

画像

身の回りの観察

見逃してしまいがちな身の回りのものも
よく見てみると意外と3階調に見えるものもあります
観察してみてください

画像

解答例

画像
画像

他にも答えはあると思いますので
頭の体操に3階調で描いてみてください
慣れてくると上手い人の省略方法がわかるようになってきます
だから上手いんだっていうのがわかるようになると
真似してみたくなりますよ

おまけ

アニメ背景の場合、昼は真上からの光源として扱いますが
実際には描きやすいように少しずらして描きます

また電柱や木の影なども
場合に応じて省略します

画像

アニメの背景は遠景を2階調でシンプルに処理するなどして
中景、遠景の立体表現をうまく省略することで遠近感を誇張し
近景の存在を印象的なものにしていると思います

今まで気にしなかった方は 注目してみてください
背景の楽しみ方が増えると思います

ちなみにこの参考画像はデジタルだけでなくコピックでも描いています
色ムラになりにくく、色の段階を描き分けることができるので便利です
僕はニュートラルグレイを全部持っていますが
まずは3本ほど手元に置いてみてはいかかでしょうか
フィルムスタディーやスケッチの明暗表現の役に立つと思います

 

以下はコピックのアマゾンへのリンクです

https://amzn.to/3SLLdt1