映画を観て思ったこと(ネタバレなし) PR

4:3なのにワイド画面にトリミングしてるように見えた「マクロスプラス」

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

今回、久しぶりにマクロスプラス Move Editionを見て

うわっスゲー!画面は4:3なのに
まるで画面が16:9にトリミングされてるみたい!
自然と画面上半分や下半分、中央だけに目が行くと驚きました

この映画を見ていて気になったのは
視線誘導や構図、画面のアスペクト比(画面の縦横比)についてです

そこで
この記事ではストーリーに一切触れずに

  • 視線誘導
  • アスペクト比

について
なぜ、この2点が気になったのかをまとめます

 

「マクロス」シリーズの公式YouTubeチャンネル
MACROSS chより

マクロスプラス発売時のテレビはほとんど4:3

マクロスプラスは
僕がアニメ背景描きになりたいと思い始めた高校生の時の作品です
1994年から1995年にかけて
30分×4話のOVAとして発売され
その後、再編集されたMove Editionが劇場公開されました

この頃はまだ、ほとんどがブラウン管のテレビでアスペクト比(縦横比)は4:3で
ワイド画面(16:9)のテレビが一般家庭に普及するのは
これからといった時期だったと思います

なので
OVA版は4:3で制作されているのは納得できます
しかし僕はMove Editionは16:9で見たと記憶していました

今回見返すまでOVA版の4:3から映画館用に16:9へ
トリミングされていると思い込んでいたのです
ところが再生してみると
「えっ!!スタンダード(4:3)なの?」
と驚きました

Move Editionは大学生時代に
ビデオテープで何度も見たし
2005年にアニメ背景会社に就職した後も何回か見たはずなのに
なぜかMove Editionは16:9で見たと
勘違いしていたようです

視線誘導について

4:3が16:9にトリミングされているように見えた!

作品を見ていると
画面の余白の部分が広いにもかかわらず
視線が一点に集中することが何度かありました

まるで「見るべきは、ここです!」と誘導されているかのように
上手く視線が導かれてました

まさに下図のように
画面上半分や下半分、中央だけに目が行って
まるで画面全体が16:9にトリミングされているような不思議な感覚でした

もしかしたら
これが原因で勘違いしていたのかもしれません

集中線を利用した視線誘導

一時停止して確認したわけではないので
詳しくは調べていませんが
下図のように集中線のような線を利用して
上手く焦点に視線を誘導しているんだろうなという画面がありました

他にも配色や動きなどを利用して
様々な工夫をしているんだろうと思います

なぜ視線誘導が気になったのか?

半年ほど前
構図を勉強するために
自分で撮った3:2の写真を16:9にトリミングする練習をしていました

「自分は何を気に入ってこの写真を撮ったのか?」を考え
その「気に入った要素」が伝わりやすいように
邪魔な情報を取り除くようにトリミングいていました

何度か撮影とトリミングを繰り返すうちに
ファインダーを覗いた時点で余計なものが写り込まないように意識して
最初から「画になる」構図を意識して撮るようになりました

これまではアニメ作品の背景を見ても
雰囲気や描き込みなどに目が行くことはあっても
構図の上手さや視線誘導の工夫にはあまり気付くことはありませんでした

しかし今回、マクロスプラス Move Editionを見て
意図的に描いてるのがわかるぞ!!と
構図の勉強の成果があったんだと嬉しくなりました

トリミングの練習について

僕は自分で描いた絵を使って簡単なカメラワークを付けたアニメーションを
作ってみたいと思っているので
16:9にトリミングしています

練習方法としては
「あっ、これ描きたい!」と思ったら写真を撮って
描きたいと思った要素が伝わるようにトリミングするというものです

下の図に
「建物や信号越しの空がきれい」だと思って撮った写真を
トリミングをするときに考えたことを書き出しました

いくつかトリミングした画像を並べてみた結果
上図の2つの候補に絞ることができました

つぎに、どちらにするか決定するために
画面内で動きや方向性を感じる方向に矢印を描いて
視線がどのように動くかを確認しました

右側の図では信号の上に空間がないため
矢印の先が画面外になってしましますが
左の画像の方は信号の上に空間があるので
空に目が行くと感じました
最初に描きたい要素が「空が綺麗」だったので
左の画像に決定しました

構図を考えるうえで
この考え方が正解というわけではありません
他にも黄金比や三分割法、配色を使った考え方もあります
今回紹介した方法は
いくつもある考え方のうちの一つです

「視線誘導」についてのおすすめの書籍とネット連載記事

この矢印を使った構図の練習やトリミングに興味がある方は
「風景画のレッスン」ミッチェル・アルバラ(著)をご覧ください
https://amzn.to/42SDPTp
1つの写真からトリミングしていくつかの作品を作ったり
写真の上から動きを矢印でマッピングするという演習課題があります
色、形、縦横比、構図、明暗など初心者から上級者まで使える内容が
解説と演習問題で構成されています

僕がこの本を読んだのは
上述の練習をした後ですが
やっぱり効果的な練習なんだ!と安心しました

このような矢印を使った練習をしていたから
マクロスプラスを見たときに視線誘導の印象が強かったんだと思います
作品を見ている最中に画面内に矢印が見えているような感覚になって
「見える!見えるぞ!」とテンションがあがりました

もし視線誘導や構図などの「画作り」って何?という方は
CGワールドで連載中(2025年2月現在)の
「栗田 唯の映画から学ぶ画づくりのセオリー」
https://cgworld.jp/regular/202312-kurita-01.html
を見てみてはいかがでしょうか
無料で読むことができますし
実写映画を題材として「画作り」について
どういった工夫がされているのか
わかりやすく解説しているので初心者におすすめです

より体系的に学びたいという方には
「Vision」
ーストーリーを伝える:色、光、構図
ハンス・P・バッハー、サナタン・スルヤヴァンシ(著) 

https://amzn.to/410QNMn
がおすすめです

この本の特徴は
文章による説明が最小限に抑えてある代わりに参考画像が多い点です
パラパラとめくっているだけでも
なるほど、こういった知識を組み合わせて画面を作っているのか!と
視覚的にわかりやすい本になっています

アスペクト比について

映像について勉強するために
脚本や編集など画に関すること以外の本も読み始めたこともあって
一度は映画の歴史を頭に入れておこうと
本屋で見つけた技術に関する歴史の本を読みました

「映画技術入門」 高良 和秀 (著、 編集)、ゆめの (イラスト)
https://amzn.to/3EHxMHp

この本は
カメラ、レンズ、音響など映画技術の進歩が
作品にどういった影響を与えたのかといった観点で映画の歴史がまとめられています
各項の導入部分が漫画になっていて図解も多いので
パラパラとめくって気になった部分を読むだけでも
広く知識を得られると思います
映画の歴史を勉強してみたい方は辞書として手元に置いておいてはいかがでしょうか

「映画技術入門」については以下の記事をご覧ください

「フィルム、カメラ、音響の進化を追体験! 名作を技術で読み解く『映画技術入門』」「映画技術入門」 高良 和秀 (著、 編集)、ゆめの (イラスト) https://amzn.to/3PgE9nt この本は一言...

 

この本で気になったのはアスペクト比でした

僕が絵の仕事を受注するときは画像サイズを指定されているので
自分でアスペクト比を考える必要はありませんでしたが
自分で映像作品を作るつもりで構図を勉強し始めると
アスペクト比を決めることにも意味があるんだなと気付くことができました

例えば下図のように
4:3と16:9で同じように人物を画面に収めた場合に
余白の部分の面積が全然違います

トリミングの練習をする前は上図を見比べても何も感じなかったと思いますが
トリミングの練習をした今では
16:9では人物以外の余白の部分が広すぎて表情に集中できないと思ってしまいます

映画を撮る場合は
自分が撮りたい映像が表情中心の会話劇なのか
広大な自然を映したいのか
といったことを考えて
いくつかあるアスペクト比の中から選ぶ必要があります

アスペクト比を自由に決めることができる絵を描いているのに
描き慣れた16:9でしか描かないというのでは
思考停止状態でしかないのではないかと反省しました

自分が表現したいものを適切に表現できるように
アスペクト比についても考えるクセを付けようと思いました

まとめ

マクロスプラス Movie Editionのあと
4:3の作品は見ていませんが
同じように16:9にトリミングされているような印象を受けるのか
4:3の画面全体を使った印象を受けるのか注目してみようと思います

最近はスマホを使う機会が増え
縦読み漫画やインスタグラムなど
様々なアスペクト比があり、それぞれに特有の構図や視線誘導が出てきていると思います

絵を描く人も描かない人も
この記事をきっかけに
新たな視点で映像作品を楽しんでいただけたら嬉しいです