映画を観て思ったこと(ネタバレなし) PR

ネタバレなしの備忘録「パトレイバー2 the Movie 」を観て

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高校1年のときに映画館で観て以来
ビデオテープかDVDで1度は見たことがあると思いますが
かなり久しぶりに観て感じたことを備忘録としてまとめます

感じたことは次の3つ

  • 「重ね塗り」の力強さ
  • 「絵の上手い下手は関係ない」目的のわかりやすい構図
  • 広い面積の壁をグラデーションだけで表現

 

参考までに
下の画像はエモーションチャンネルより
4DXの予告編です

はじめに

「パトレイバー2 the Movie」は
僕が高校1年の時に映画館で観ました

中学のころからは実写映画を観ていても
どんな絵を描けば
このような映像が作れるのかを考えながら見ていたので
高校1年の時に映画館で
この作品を観て
こんな絵が描けるようになれば
思い通りの映像が作れるようになれるんだろうなと
具体的に背景画に興味を持ちました

 

前回、観たのはいつかわかりませんが
以前観たときは
どれが美術監督の小倉さんの絵かわかりませんでした
しかし今回はタッチの入れ方などで
多分、これは小倉さんの絵だろうなと思う絵がいくつかありました

小倉さんの絵の特徴を理解できたわけではなく
小倉工房出身の方の絵を直接画用紙で見る機会が増えたので
見覚えのあるタッチに気付くことができるようになっただけです
もしかしたら勘違いかもしれません

感じたこと

「重ね塗り」の力強さ

この作品の中で重ね塗りの力強さに気付いたのは
全面が窓ガラスの背景に何かが写り込むというシーンです

ガラス面のグラデーションに
いくつかの窓枠のみを描き込むような背景ですが
画面中央あたりの1枚のガラスだけ
重ね塗りがしてありました
変化をつけて画面中央に視線を集めるため
あえて重ね塗りをしたんだろうな
自分なら怖くてできないなと思いました

 

僕は「地塗り」と呼ばれる
下塗りで作ったグラデーションの上にタッチを入れるのが苦手です
タッチを入れて失敗するのが怖いというのもありますが
せっかく綺麗に作ったグラデーションを
できるだけ、そのままにしておきたいと思うからです

しかし残念ながらグラデーションだけでは存在感がありません
触ることのできない空間のように感じられてしまいます

そこでグラデーションの上から
薄塗りで筆跡が残るようなタッチを重ねたりすることで
手に触れることができるような抵抗感を表現します

下図は違いがわかりやすいように
ザラザラとツルツルで描き分けていますが
ツルツルの部分の方が手前に飛び出ていて
「硬そう、触れそう」という感じがしないでしょうか

また全体がザラザラなのに対して部分的にツルツルなので目立ちます

僕は怖くて避けていましたが
この背景を描いた人は
こうやって画面の真ん中のガラスだけ目立たせていたのか!と気付きました

この方法なら明度差や彩度差が低い場合でも目立たせることができます

(ちなみに上図は下図のように横に塗って乾いてから
縦に塗っています)

 

 

他にも
ハイライト部分が粗くかすれているのは意図的だったのか!と
腑に落ちる背景が多くありました

上図の上が細い線で境界がなじむように描き込んだ例
下図がかすれさせて描き込んだ例です

僕は目立たないように上のように溶け込ませていましたが
そもそも目立たせるためにハイライトを入れるなら
下のように目立たせたほうが効果的です

 

なぜ、かすれているのは意図的だと思ったのかと言いうと
目の前でコンセプトアーティストのネイソンさんが
絵を描くところを見ることができたからです
(今年の4月にネイサン・フォークスさんが講師を務める
伊藤頼子さんの2泊2日のスケッチ合宿に参加しました)

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目の前で描いているのを見てみると
思っていた以上に透明水彩を厚く塗っていました

はじめに画面全体を下塗りするときに
少し水を使うくらいで
その後は、ほとんどチューブから出したままの状態で
描き進めていました

アクリル絵の具のように厚く塗り重ねていくので
筆の勢いをそのまま画面上に残すような感じです

水分が少ないので部分的にかすれます
わざとかすれさせることで部分的に下の絵具を見せて面白みを出していました
印象派が使う分割混色を意識しているようです
(分割混色:オレンジや青など色とりどりの点描を
離れてみると色が混ざって見えるという技法)

ネイサンさんの描いているところを直接見たことで
絵具をかすれさせるような重ね塗りの面白味に気付くことができました

本で読んだりYouTubeで解説を聞くだけでは
「知っている」という状態でしたが
目の前で描いているのを見ると
「そういうことか!」と真似したくなりました

やはり百聞は一見に如かず
見れるものなら直接見た方が
何倍も感じ取れるものがあると思います

「絵の上手い下手は関係ない」目的のわかりやすい構図

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買ったはいいが
あまりにも情報量が多いので
まだパラパラとめくった程度です

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この本は監督の押井守さんが
各カットごとに目的と注意点をまとめた本です

パラパラとめくってみると原画の脇に
大まかに下のようなことが書いてあります

  • このカットはキャラがどんなにカッコよく見えてもいい
    カッコよければカッコいいほどいい
  • トンネル内と戦車がシルエットに見えるように
  • キャラを画面中央に立たせることで
    キャラの背面のガラスにキャラが映り込まないようにする

など
軽く目を通しただけですが
だからこの構図じゃないとダメなのかと理解できました

演出の人は、こういう視点でチェックしているんだなと
演出の人の考え方をインストールしていく感じで
パラパラとページをめくりました

この映画を観ていて
仮にアニメーターや背景の絵が多少下手であったとしても
面白いことは変わらないだろうなと感じました

もし、フォトリアルだったり今の時代の作風だとしても
作品の雰囲気が変わるだけで
面白さは変わらないでしょう

伝えるべきものがしっかり伝わる構図になっている時点で
キャラや背景の絵が上手くても、そうでなくても
しっかりストーリーは伝わります

僕は、しっかりと説得力のある絵が描けるようになりたいので
構図、演出については今後勉強していこうと思っています

広い面積の壁をグラデーションだけで表現

後藤隊長と南雲隊長が二人で会話するシーン(隊長室?)で
背景の面積が結構広いのに
下図のような蛍光灯のグラデーションのみで表現されていて驚きました
(こんな色の印象だったと記憶を頼りに描いています)

なぜ驚いたのかというと
僕ならば壁の面積が広かったら質感を描き込んで
「ガチガチに壁」を表現してしまっただろうなと思ったからです

しかし質感は描き込まれていませんでした

もし壁の質感を描き込んでいたら
2人の表情ではなく壁に目が行っていたと思います
表情にピントが合っていれば壁はボケる質感は見えない
ということなのでしょう

このシーンの壁を見て
つい描き込んでしまいたくなった自分は
完成映像にたいするイメージが貧困だったなと反省し
もっと演出意図をくみ取れるようになりたいと思いました

 

以上
僕が気になった3点でした
何かしらの参考になったら幸いです

 

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