色について
自分がなんで、この色を使っているのかわからない
なんとなく無意識に選んでしまっている
といった方はいませんか?
遠景は青っぽい、影色は青っぽい
どうやって区別するの?
僕も以前は
山を描くときは遠景にライトブルーやブルーセレストを混ぜ
陰にはコバルトブルーを混ぜるといった感じで
経験上、なんとなく色を選んでいました
しかし今回
色の知識を総動員して
使う色を4色に絞ったスケッチしてみたところ
思った以上に頭の中が整理されたので
その練習内容をまとめます
なんとなく色を選んでしまっているという方の
色選びのヒントになると思います
ぜひ最後までご覧ください
スケッチの目的と方法
練習の目的
この練習の目的は
見たままの色を作るのではなく
目の前のモチーフを意味のある色に置き換えて
絵として再構成することで色を理解する
具体的には
ホワイト、ライトブルー、コバルトブルー、ライトグリーンの4色で描きます
- ライトグリーン:固有色
- ライトブルー:遠景の青み
- コバルトブルー:影色の色
- ホワイト:明度を上げる
光面の遠景は
ライトグリーンにライトブルーとホワイトを混ぜる
影面の遠景は
ライトグリーンにコバルトブルーとライトブルー、ホワイトを混ぜる
といったように色と意味を対応させて作業的に色を作ります
適切な場所に適切な色を置く練習です
見たままの色が作れないことに
戸惑うかもしれませんが
慣れてしまえば色数が少ないぶん
短時間で描けるようになります
練習方法
緑色の画用紙で作った山と
絵の具で描いた空(白~ライトブルーのグラデーション)を
実際の山と思ってスケッチします
使う色はポスターカラー(ニッカー)の
ホワイト、ライトブルー、コバルトブルー、ライトグリーンの4色のみ
写真を見るのではなく
自分でセッティングした実物を見ながら描くことを
おすすめします
シンプルな練習ですが
非常に難易度が高いと思います
頭で考えず作業的にできるようになるまで
何回か試してみる必要があると思います
この4色を選んだ理由
- 遠景を青っぽくして遠近感を出したい
- 光面と影面の色を区別したい
今回は上の2つを表現したかったので
最小限の色数で表現できる色を選びました
理由は以下の図のようになります
太陽光を黄っぽい白色光とした場合
→光面は黄の影響を受ける
→影面は黄の影響を受けない
と考えて
遠景の青は黄味のある範囲からライトブルー
影色は黄味のない範囲からコバルトブルー
山の固有色としてライトグリーン
明度調節としてホワイトを選びました
「遠景の青味」と「影面の青味」の違い
上図が「遠景の青味」と「影面の青味」の違いです
ライトグリーンとコバルトブルーの混色では
コバルトブルーが少ないほど
光が回り込んだりして光の影響を受けている色
コバルトブルーが多いほど光の影響が少ない色と考えます
ライトグリーンとライトブルーの混色では
ライトブルーが少ないほど近い山の色
ライトブルーが多いほど遠い山の色
ということになります
影面の色については
遠景に行くほど白だけでなくライトブルーも増やした方が
空の色の影響を受けた遠景の色を表現できると考えることができます
シンプルですが色に意味がある以上
適切な部分に適切な色を置く必要があります
ライトグリーンに水とホワイトを加えたときの色の違い
ホワイトを混ぜた場合と
水で薄めて作った色の違いを調べてみました
上のグラフのように
ライトグリーンに水を混ぜた場合と
ホワイトを混ぜた場合では違う結果になりました
ホワイトを混ぜた場合
- ホワイトを混ぜた分だけ彩度が下がる
- 色相がほぼ変わらない
ホワイトを混ぜた分だけ無彩色に近づいていきます
水を混ぜた場合
- ある一定のところまでは彩度が下がりにくい
- 水で薄めるほど黄色味っぽくなる
ある程度のところまでは
彩度一定のまま明度が上がり、黄色っぽくなるので
ライトグリーンに暖色系の黄色っぽい光があたっていると
考えることができます
上図の2つのグラデーションを見比べてみると
ライトグリーンに水を混ぜた場合と
ホワイトを混ぜた場合で
ホワイトを混ぜたほうが青っぽく見えるのがわかると思います
ライトグリーンに関しては
ホワイトを加えれば加えるほど
青っぽい寒色系の光があたっていると考えることができます
(実際にはホワイトを加えた場合
純色のライトグリーンと比べて無彩色に近づいて冷たい印象になっているだけで
青っぽく色相が変化しているわけではありません)
残念ながらホワイトを加えただけでは
水を加えて明るくしたときの色を作ることはできません
黄色い光があたっていると仮定して選んだ色なので
ライトグリーンの明るい色は
明度の高い暖色系の黄色っぽい色にしたいところですが
残念ながらライトグリーンにホワイトを混ぜても
暖色系の色にはなりません
限定色では作ることができない色がある
ということを知ったうえで描く必要があります
ライトグリーンを水で薄めると色味が変わる理由
ライトグリーンについて
水で薄めるほど黄色味が増す理由はわかりませんが
上図のように
絵具が単一顔料ではなく
粒子の大きさが違う顔料でできている場合
水分が少ないと
一方の顔料が他方の顔料の影に隠れてしまうため
水分が多い場合と比べて
色の見え方が違ってしまうといった理由があるそうです
興味のある方は下の本をご覧ください
この本は
絵具メーカーの研究者と水彩画家の対談形式で読みやすく
絵具の歴史から材料、混色、画用紙まで幅広くまとめられています
4色で描くメリット・デメリット
メリット
- 色数が少ないのでシンプルな絵が描ける
- 光面の色、影面の色に分けて考えやすい
- 作れる色が少ないので明暗や距離感を表現する青みなど
色と意味を対応させて考えやすい
デメリット
- 見たままの色が作れない
メリットはそのままデメリットにもなりえます
意味のある4色を選んでいるので
きちんと意味のある色の使い方をしないと
絵としてまとまりません
極端に言ってしまえば
このスケッチには正解があると言えます
光が当たっているはずの部分に
光が当たっていない色を置くと不自然に見えてしまいます
しっかり色の意味を考えたうえで
色を使う必要があります
したがって
色の意味を考えながらスケッチするには
最適な練習なのではないかと思います
まとめ
最小限の色数でのスケッチのため
作りたくても作れない色もあります
例えば
前提条件として黄色っぽいい白色光にしたので
光が強くあたっているところは
より明度が高いだけでなく
より黄っぽい必要がありますが
ライトグリーンにホワイトを混ぜても
黄色っぽくはなりません
別に黄色が必要になります
影についても同様に考えると
さらに何色か必要になるでしょう
しかし、いきなりフルカラーで描いても
選択肢が多すぎてコントロールしきれませんし
自分の色選びの問題点がどこにあるのかの判断もできません
必要最小限の色に絞ることで
自分が表現したいものは何なのか考えてみてはいかがでしょうか?
無意識に色を作っているという自覚がある方は
この練習をしてみてください
無意識を意識することで
今まで気づくことができなかった
改善点に気づくことができるかもしれません