自分が描きたいもの、好きなもの
ってありますか?
アニメーションの背景の仕事は
受け取ったレイアウトに従って作業するので
ゼロから自分で構図を決めることはありません
すでにあるものを
より良くすることが求められています
そんな当たり前のことに気付かず
数年アニメ背景の仕事をしているうちに
気がつけば
「ゼロから描きたい絵を描く」
というトレーニングをしないまま
技術力だけが身につき
自分が好きなものや描きたいものが
わからないという状態になってしまいました
自分は何が描きたいのか?
何に魅力を感じるのか?
そんなことを考えながら
じゃあ同じ画を扱う画家や写真家は
何を考えているんだろう?
もしかしたら
何かヒントが見つかるかもしれない
と思って読んだのがこの本です
この本は一言とでいうと
進むべき方向を示してくれるような本です
技術的に「こうしなさい」ということは
一切書いてありません
撮りたいように撮って
思ったように撮れなかったら
技術を学べばいい
というスタンスで
インスタの写真を褒められた大学生のカズトが
プロカメラマンのロバートにアドバイスをもらいながら
写真を撮り始めるという
会話中心の小説形式で書かれています
- カメラ選び
- 「面白い写真」と「面白いものを撮った写真」は違う
- 映像は言葉で構成されているから
言葉で描写できないものは認識できないから撮れない - 撮りたいと思ったものしか撮ってはいけない
など
具体的な技術の話はなく
考え方や心構え、やってはいけないことなどを
ロバートが下らない冗談を交えながら
語りかけていきます
(もしかしたら下らない冗談が苦手
という方もいるかもしれません)
時々語られるロバートの苦労話にも説得力があり
この人の経験や知識を超えることはできるのか?
この人に「いい」と思ってもらうことはできるのか?
「作品を見てもらうって怖いな」ということも含めて
実際にプロのカメラマンに教えてもらうって
こんな感じなんだろうなと
思わせてくれる本です
この本に具体的な練習方法が書いてあったわけではありませんが
- 自分は何が描きたいのか?
- 何に魅力を感じるのか?
を探すために
出かけるときはカメラを持ち歩き
少しでも気になったり、描きたいと思ったものは
撮って16:9にトリミングするようになりました
トリミングすることで
自分は何を「いい」と思ったのか?を
具体的に考えるようになり
ある程度、自分が好きな構図や色などの
パターンが見えてくるようになりました
さらに、その写真を単純化した絵にしてみたら
なかには
そもそも絵にならない、トリミングミスか?
という結果にもなりました
写真をそのまま絵にするなら
いい写真を撮らなきゃいけない
写真を再構成して絵にするにしても
どのように再構成するのかイメージがなければ
撮っても絵にならない
最初から
絵にするつもりか?資料写真か?
を明確に意識しながらファインダーを覗くようになりました
ファインダーを覗いたときに
面白いと思ったものを
過不足なく画面に残してトリミングする練習をしはじめて
明らかに見る目が変わったと思います
最後に、この本で特に重要だと思った言葉を一部抜粋します
このことを忘れずに描き続けていこうと思います
- カズトはカズトのボキャブラリー以上の写真は撮れない。ボキャブラリーというのは言葉も体験も思考もすべてを含んでいる(60ページ)
- 個性というと大げさだけど、自分だけの独特なやり方を変えずに向上し続ければ、必ずいつかそれを求める人が現れると思う(223ページ)